企画書や提案書、報告書の場面で「意図」と「目的」を取り違えると、説明に説得力が欠けたり、意思決定者の疑問を招いたりします。私は現場での資料レビューを通じて、目的と意図を混同している例を多く見てきました。本記事では、実務で使える定義、書き分けのルール、すぐに使える表現例とテンプレートを提供します。最後まで読めば、企画の構造が格段に伝わりやすくなります。
結論(要点)
まず最初に結論を示します。目的は「最終的に成し遂げたい結果(ゴール)」、意図は「その手段を選んだ理由(狙い・ねらい)」です。
目的=向かう場所(What)/意図=その手段に込めた考え(Why・Howの一部)──これを常に分けて書く習慣をつけてください。
目的とは何か(定義と特徴)
目的はプロジェクトや施策で達成したい具体的な結果を指します。比較的安定しており、測定可能な指標(KPIやKGI)に落とし込みやすいのが特徴です。
目的の特徴
- 達成すべき最終的なゴールである。
- 定量化できることが望ましい(例:売上10%増、会員数1万人)。
- プロジェクト全体の評価基準となる。
- 期間や数値を設定すると関係者の合意が取りやすい。
目的の実務例
- 「次年度の新規顧客獲得数を前年比15%増とする」
- 「サービスの月間継続率を70%に引き上げる」
- 「運用コストを年間200万円削減する」
意図とは何か(定義と特徴)
意図は、なぜその手段を選んだのか、どのような狙いでその施策を行うのかを説明する言葉です。目的を達成するための戦術や方針に近く、文脈や対象に応じて変わります。
意図の特徴
- 手段や施策に込めた「ねらい」を表す。
- 短期・中期で変わりうる柔軟な要素。
- 読者に「なぜその施策が合理的か」を納得させる役割がある。
- 具体的な施策説明(Why→How)に組み込むと説得力が増す。
意図の実務例
- 「若年層に響くデザインで共感を高め、滞在時間を伸ばす意図」
- 「価格を下げずに価値訴求で差別化する意図」
- 「登録ボタンをファーストビューに置き、導線の分かりやすさで登録率を上げる意図」
目的と意図の比較(ひと目でわかる)
| 観点 | 目的 | 意図 |
|---|---|---|
| 示す内容 | 最終成果(What) | 手段に込めた狙い(Why/Howの一部) |
| 時間軸 | 長期・最終 | 短期〜中期で変化する |
| 定量化 | 必須に近い(KPI化可能) | 定性的でも可(ただし根拠が必要) |
| 文書での役割 | 評価基準・ゴール提示 | 施策の合理性説明 |
よくある誤用と修正方法
意図と目的が混ざると、読み手が「何を評価すればいいか」が分からなくなります。よくある誤用パターンと正しい書き方を示します。
誤用例:意図を目的として書く
× 「企画の目的は利用者に親しみを持ってもらう意図です。」
→ 意図と目的が入れ替わっています。正しくは:
○ 「目的:利用者数を増やすこと。意図:親しみやすいデザインで共感を生み、登録率を高める狙い。」
誤用例:目的が曖昧で意図だけが長い
× 施策説明が長くて、最終的な成果が定義されていない。これではKPI設定ができません。
○ 最初に目的(数値)を明示し、その後に意図(根拠と狙い)を続ける構成に直してください。
企画書・提案書で使えるテンプレート(そのまま使える)
ヘッダー(冒頭)
目的:[達成したい成果(数値で明示)]
期間:[実施期間]
施策ごとの説明フォーマット
施策名:[施策のタイトル]
意図:[この施策を選んだ理由・期待する効果(定性的)]
期待指標(KPI):[測定する指標と目標値]
実施計画:[誰が・いつ・どのように実施するか]
実践例(広告施策を例に)
目的:新規登録数を3か月で5,000件増やす(KPI:月1,667件)
施策:SNS広告の動画クリエイティブA/B配信
意図:短尺の動画でファーストビューの注意を引き、登録までの心理的ハードルを下げる。若年層のエンゲージメントが高いチャネルに絞ることで費用対効果を最大化する狙い。
検証方法:CTR・CVR・CPAを週次で計測し、4週間ごとに最適配分を実施。
まとめ(覚えておくべき最小ルール)
- 目的=何を達成したいか(必ず数値や期限で表す)
- 意図=なぜその手段を選ぶか(施策に込めた狙いを明示する)
- 企画書では「目的→意図→施策→KPI」の順に書くと読み手に伝わりやすい
- 混同を避けるため、冒頭で「目的」を必ず提示する習慣をつける
言葉の精度を上げることは、資料の信頼性と意思決定の速度を高めます。私自身も目的と意図を明確に書き分けるようにすることで、レビュー回数が減り、承認までの時間が短くなりました。
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