人の話を聞いたとき、「共感した」と言う人もいれば、「同情した」と言う人もいます。
一見似ているように見えるこの二つの言葉ですが、実は意味も効果も大きく異なります。
ビジネスや人間関係では、この違いを理解しているかどうかが、信頼される人になれるかどうかを分けるカギになります。
共感とは?|相手の立場で「感じる」力
共感とは、相手の感情や経験に対して「自分も同じように感じる」こと。
心理学では「感情的共鳴(emotional resonance)」と呼ばれ、他者の感情を自分の内側で再現するプロセスを指します。
たとえば、友人が仕事の失敗で落ち込んでいるとき、
「その気持ち、すごくわかるよ。自分も似た経験があるから…」
と感じ取るのが共感です。
このとき大切なのは、相手を理解しようとする姿勢。
つまり、共感には「相手の立場で世界を見る想像力」が欠かせません。
ビジネスにおける共感の重要性
ビジネスの現場では、共感力が高い人ほど「聞き上手」として信頼を得やすくなります。
営業職なら顧客の“本音”を汲み取る力。
マネージャーなら部下の不安やモチベーションの変化を察知する力。
これらはいずれも共感力の応用です。
スタンフォード大学の心理学者カール・ロジャースは、
「真の共感とは、相手の世界に入っていく勇気だ」と語っています。
助けようとする前に、まず理解しようとすること。
それこそが信頼関係の第一歩なのです。
同情とは?|相手を「外側から見る」感情
一方、同情とは「相手を気の毒に思う」「かわいそうだと感じる」感情です。
心理学的には、他者の苦痛を外側から評価する行為とされています。
たとえば、友人が落ち込んでいるときに、
「かわいそうに、大変だったね…」と声をかけるのは同情です。
このとき、自分は“見守る側”に立っており、相手とは同じ立場ではありません。
同情の根底には「助けたい」という優しさがありますが、
相手からは「上から目線」と感じられることもあります。
特にビジネスや職場の関係では、同情よりも共感のほうが信頼を築きやすいのです。
共感と同情の違いを比較
| 項目 | 共感(Empathy) | 同情(Sympathy) |
|---|---|---|
| 感情の位置 | 相手と同じ立場で感じる | 相手を外から見る |
| 心理的距離 | 近い(同じ目線) | 遠い(上からになりやすい) |
| 行動の方向 | 理解しようとする | 助けようとする |
| 相手に与える印象 | 「わかってもらえた」と感じる | 「見下された気がする」こともある |
| 人間関係への影響 | 信頼を深める | 距離が広がる場合もある |
なぜ共感は信頼を生むのか?
ハーバード・ビジネス・レビューによると、共感力(Empathy)は最も重要なリーダーシップ・スキルとされています。
理由は明快で、共感できる人は「心理的安全性」を生み出すことができるからです。
共感的なコミュニケーションでは、相手が安心して意見を話せる空気が生まれます。
「この人は自分を理解しようとしてくれている」と感じた瞬間、人は自然と心を開きます。
逆に、同情的な態度ばかりだと、相手は“かわいそうな存在”として扱われることに疲れてしまうのです。
共感力を高める3つの習慣
- 相手の話を最後まで遮らずに聞く
沈黙も立派なコミュニケーションです。焦らず受け止めましょう。 - 相手の感情を言葉で確認する
「それは悔しかったね」「不安だったんだね」と言葉にして伝えると、理解がより明確に伝わります。 - 自分の経験を押しつけない
共感とは「わかるよ」と寄り添うこと。
「自分も昔こうだった」と主導権を奪うのは逆効果です。


まとめ|共感は“理解”、同情は“評価”
共感と同情の違いは、相手を「理解する」か「評価する」かの違いです。
信頼される人ほど、相手を“かわいそう”とは見ず、“同じ人間として理解しよう”とします。
ビジネスでもプライベートでも、共感は最強の信頼構築ツール。
「相手の立場で感じる」ことができれば、人間関係は格段にスムーズになります。
📝 出典・参考(内容確認済み・安全)
- UC Berkeley|Greater Good Science Center|Empathy(共感の定義)
- APA Dictionary of Psychology|Sympathy(同情の定義)
- Cambridge Dictionary|Empathy


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