ビジネスメールや会議で耳にする「今回の趣旨は〜」「イベントの趣向を凝らして〜」という表現。
どちらも自然に聞こえますが、実は意味も使い方もまったく異なります。
この記事では、語源・使い方・ビジネスでの使い分けを具体例とともに解説します。
🔹「趣旨」とは?|行動や発言の「目的・意図」を示す言葉
「趣旨」とは、行動や発言の根本にある目的・意図・理念を意味します。
つまり「なぜそれを行うのか」を説明する“方向性”を示す言葉です。
例文:
・会議の趣旨を理解したうえで発言してください。
・ボランティア活動の趣旨に賛同する。
・会社の設立趣旨を説明する。
英語では “purpose” や “intent” に近く、
文書や公式な説明の場でよく使われます。
「趣旨を理解する」「趣旨に沿う」といった表現は、ビジネス文書でも定番です。
🔹「趣向」とは?|工夫・演出・アイデアを示す言葉
「趣向」とは、人を楽しませたり印象づけたりするための工夫や演出を意味します。
「どう行うか」という実践面に焦点を当てた言葉です。
例文:
・花火大会では新しい趣向を凝らした演出が話題になった。
・和の趣向を取り入れたカフェ。
・趣向を変えて、今回は立食形式にしてみた。
英語では “idea” “design” “arrangement” などが近いニュアンスで、
感性・創意工夫を表す表現です。
🔹違いを整理|「趣旨」は目的、「趣向」は表現
| 項目 | 趣旨 | 趣向 |
|---|---|---|
| 意味 | 行動・企画の目的・意図 | 演出・工夫・アイデア |
| 使う場面 | 企画書・説明・公式文書 | イベント・デザイン・広報 |
| 英語訳 | purpose / intent | idea / design / device |
| 例文 | 計画の趣旨を明確にする | 趣向を凝らした演出をする |
まとめると、「趣旨」は“なぜやるか(目的)”、「趣向」は“どうやるか(方法)”。
この2つを混同せず使えるだけで、言葉の正確さがぐっと上がります。
🔹ビジネスでの正しい使い分け例
誤用例:
× この会議の趣向は売上向上にあります。
→ 「目的」を述べているため誤り。正しくは「趣旨」。
正しい表現:
◎ この会議の趣旨は、売上向上のための戦略共有です。
◎ 社員旅行では、ユニークな趣向を凝らして楽しんでいただきます。
「趣旨」は上層部・文書向け、「趣向」は現場・企画・PR向けと覚えておくと自然です。
🔹語源で見る「趣旨」と「趣向」|“内向き”と“外向き”の違い
どちらも「趣(おもむき)」を含みますが、
語尾の「旨」と「向」が意味の方向性を変えています。
- 趣旨:「旨(むね)」=物事の中心・目的・本質 → “内にある意図”
- 趣向:「向(むかう)」=方向・傾向 → “外に向けた表現”
つまり、「趣旨」は“理念・根本を定めること”、
「趣向」は“その理念を表に出して魅せること”。
構造的に見ても「内」と「外」という補完関係にあります。
🔹なぜ混同されるのか?|曖昧な「企画文脈」が原因
日常では「企画のテーマ」として両方が使われるため混同されがちです。
「イベントの趣旨」「イベントの趣向」など、どちらも自然に見えるため
違いを意識せず使われてしまうのが誤用の原因です。
しかし、ビジネスの場ではこの区別が信頼性に直結します。
社内報・会社案内・プレゼン資料などで正しく使い分けることで、
言葉に対する“精度の高さ”と“教養の深さ”が伝わります。


🔹まとめ:「趣旨」は理念、「趣向」は工夫
- 趣旨=目的・意図・根拠(なぜ行うか)
- 趣向=工夫・演出・表現(どう行うか)
- 使い分け:趣旨 → 会議・提案書/趣向 → イベント・広報・PR
言葉の使い方ひとつで、文章の印象は劇的に変わります。
特に「趣旨」と「趣向」を正確に使い分けられる人は、
相手から“知的で信頼できる”印象を持たれやすいでしょう。



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