資料を作っているときや、研修で説明をするときに、
「ここは“例示”って書くべき? それとも“提示”?」
と手が止まったことはありませんか?
私自身、社内向けの説明資料で
「事例を示しているつもり」で“提示”と書いたところ、
「それは例を出しているだけですよね?」と指摘されたことがあります。
言われてみれば確かにその通りで、
両者の違いを感覚で使っていたことに、そのとき初めて気づきました。
「例示」と「提示」は、どちらも“示す”という意味を持つ言葉ですが、
役割も、読み手に与える印象も、実務でははっきり違います。
この記事では、資料作成や研修、社内メールなど、
実務で迷わなくなる使い分けの感覚を整理します。
例示と提示の違い|まずは結論をシンプルに整理
- 例示:理解を助けるために「例として示す」
- 提示:判断や確認のために「正式に示す」
この違いを押さえるだけで、
「これは確定なのか? それとも一例なのか?」という無駄な確認が激減します。
「例示」とは何か|意味と使い方を実務目線で解説
「例示」は、抽象的な説明や分かりにくい内容を、
具体例を使って補足するための言葉です。
- あくまで“例”である
- 他にも当てはまるケースがある
- 理解を深めることが目的
説明資料や研修、マニュアルでよく使われます。
例文
- 主な施策として、次のような内容を例示します。
- トラブルの一例として、以下を例示します。
- 分かりやすいように、具体例を例示します。
ここで示している内容は、
「これだけに限る」という意味ではない、という余白を含みます。
「提示」とは何か|意味・ニュアンス・使われる場面
「提示」は、相手に判断・確認・選択をしてもらうために、
正式な形で示すときに使う言葉です。
- 責任を伴って示す
- 判断材料として出す
- 曖昧さが少ない
例文
- 本件について、以下の条件を提示します。
- 対応案を2案提示いたします。
- 参考価格として金額を提示します。
「これを見て判断してください」という姿勢が、
文面から自然に伝わるのが「提示」です。
例示と提示の違いを比較すると何が違うのか
| 項目 | 例示 | 提示 |
|---|---|---|
| 目的 | 理解を助ける | 判断・確認してもらう |
| 示す内容 | あくまで一例 | 正式な内容・選択肢 |
| 限定性 | 限定しない | 限定・確定に近い |
| 主な場面 | 説明・研修・補足 | 提案・資料・合意形成 |
同じ「示す」でも、
読み手に求める行動がまったく違うことが分かります。
実務でよくある「例示」と「提示」の使い分けミス
ケース1:資料の箇条書き
× 改善案を以下に提示します(実際は例を並べているだけ)
○ 改善案の例として、以下を例示します
ケース2:研修資料・マニュアル
× 注意点を提示します(判断材料ではない)
○ 注意点の一例を例示します
ケース3:上司・取引先への共有
× 対応方法を例示します(判断してほしいのに弱い)
○ 対応方法を提示します
「確定なのか、例なのか」
ここをズラすと、相手の受け取り方が一気に狂います。
資料・研修・マニュアルでの正しい使い分け方
- 理解を助けたい → 例示
- 判断してもらいたい → 提示
特に研修や説明資料では、
「提示」を多用すると圧が強くなりがちなので注意が必要です。
メールや社内文書ですぐ使える例文まとめ
例示を使う文
- 理解しやすいよう、具体例を例示いたします。
- 想定ケースの一例として、以下を例示します。
提示を使う文
- 検討案を2案提示いたします。
- 契約条件を以下の通り提示いたします。
どちらも、無理に堅くせず、
自然に使える表現です。
迷ったときの判断基準|例か、判断材料か
- これは“例”で十分か? → YES:例示
- これを見て判断してほしいか? → YES:提示
この2つだけで、
実務ではほぼ迷わなくなります。
まとめ|例示と提示を正しく使うと文章は一段うまくなる
- 例示:理解を助けるための「たとえ」
- 提示:判断してもらうための「正式な示し方」
- 例か、判断材料かで使い分ける
ほんの一語の違いですが、
その一語で文章の精度と伝わり方は確実に変わります。
次に資料や研修資料を作るとき、
「これは例示? それとも提示?」
と一度だけ立ち止まってみてください。
それだけで、文章は確実に引き締まります。



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